いのちのかたち

人間が手に取り心地よいと感じるかたちのひとつに卵形がある。人類は卵から生まれてきたわけではないが、鳥類の産んだその形の中には生命が存在し細胞分裂を繰り返した後赤ちゃんが誕生することは、経験的に知っている。それゆえに、卵形を見た瞬間、手に取ったその時、たとえそれが形だけのものであったとしても、そこにあたかも生命が内包されているような錯覚に陥りぬくもりを感じる。ところがそのような形がわずかに変形したものでその卵のもつイメージとまったく相反する感覚を我々に呼び覚ますものがある。例えば弾丸、砲弾といった人間の命を奪う死のイメージに結びついたものである。今回は、卵形の持つ二面性に焦点をあてた。床面に無造作に置かれた10個の多様な卵形の作品は鑑賞者が自由に揺らしたり、転がしたりすることができる。そのとき中にある振動スイッチが揺れに伴いon-offし、青と赤のLEDが発光する。その点滅と発光色による変化は、見る人の心の在りようによって相反する状況や感情を想起させることになるのである。それは生と死、怒りと無関心、喧騒と静寂、活気と停滞、戦争と平和といったものであろうか。