<コメント> 私たちは、他の生物と同じく食物をエネルギー源として消費しながら生きています。ところが一人当たりの食事の量やその内容は、国や地域により 大きく異なっています。こうした状況の中で、例えば同じ栄養失調でも、農業政策の失敗や貧困による食料不足、美容目的のダイエット、精神的ス トレスからの摂食障害、知識不足による偏った食生活等、原因が全く異なるという現状があります。今回、大きさの異なる円卓が歯車のように連動 しながら回転する装置を作りました。このテーブルは面積や人口、また経済力の異なる国であると考え、その上に紙の食器を積み上げます。空の食 器が積み上げられたさまを、飢餓の象徴と考える人、逆にファストフード店での食後の光景と見て、飽食の時代の象徴と捉える人、あるいは、伝統 的な食生活の崩壊に結びつける人や、アウトドアでの楽しい思い出が浮ぶという人、また被災地への食料援助を連想する人もいるかもしれません。 作品の解釈は見る側に委ねられ、会場を訪れた鑑賞者も食器を手に取って自由に組み替えることができ、各自のイメージする食の世界観が作品に反 映されることになります。したがって会期中に作品は少しずつ変化していきますが、1000個近い紙の食器の全体をコントロールすることは難し く、それは多様な価値観の中で出口の見いだせない世界の現状をもどかしく感じるのと似ているのではないでしょうか。そして目の前の現実だけで なく、断片化され限りなく増幅する情報にさらされる今日の状況の反映として、積み上げられ回転する複数の食器の映像を壁に投影します。それは 混沌とした不安の中で回転し続ける世界をギャラリー空間全体で提示しようとするものです。 |
食のオベリスク
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h250×w900×d550cm
紙皿,紙コップモーター,マジックテープ,ロータリーーテーブル(12)プロジェクター(4),ビデオカメラ(4),テレビ(2),DVDプレーヤー
(2) etc
個展 [アートカゲヤマギャラリー]
2013